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講義紹介

特徴ある講義を紹介

化学・生命科学コース

無機化学1

どんな内容の講義?

周期表のうち典型元素と呼ばれる元素とその化合物が,どんな性質を持ち,どのような役割を果たしているのかを学びます。例えばアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)を例にとると,これらの単体はすべて柔らかい金属で,非常に酸化されやすく水とは激しく反応します。無機化学2では,なぜこのような性質を持つのかを原子の電子構造から理解することを目指します。また,アルカリ金属やそのイオンは電池でも使われますし,有機化学合成でも重要な役割を果たす元素です。この講義では無機化学の枠にとらわれず,元素や化合物の工業的な重要性や用途,社会とのかかわりなども取り上げます。

特徴は?

元素は一つ一つが異なる個性を持っていますが,その性質には傾向があります。例えば周期表の横方向で比べると,右の元素ほど原子の大きさは小さく,正イオンにはなりにくい。縦方向で比べると,下の元素ほど半径は大きくなり,正イオンになりやすく金属性が増します。このような傾向は「原子軌道」(※電子の入れる空席のようなもので,さまざまな形や大きさがある)への電子の入り方(=電子配置)と,原子核の電荷によって説明することができます。この講義では,個々の元素や化合物の性質を学ぶだけではなく,性質の差を生む「根本的な原因」に目を向け,統一的に理解することを重視しています。

統一的な原理・原則(総論)を学ぶ一方で,無機化学では個々の物質の性質(各論)も避けては通れません。この講義では,さまざまな化合物に少しでも親しみが持てるよう,鉱物標本やさまざまな化合物の実物,反応の様子を記録した動画を数多く講義に取り入れ,五感とともに知識を学べるよう心がけるとともに,社会でどう利用されているのか,などがわかるようにしています。

例えば図1は「蛍石」(fluorite)として知られる鉱物です。主成分はCaF2ですが,イギリス産の蛍石は希土類元素を不純物として含み,紫外線が当たると青白く発光します(講義中に実物を見てもらっています)。

照射した光と異なる色の光を出す現象は蛍光(fluorescence)と呼ばれ,現代社会のあちこちで利用されていますが,その語源となっているのが蛍石です。また蛍石は,製鉄においても不純物を溶かしだす,という重要な役割を果たしています。実はfluoriteという名前は,鉄鉱石を溶かして「流れる」(flow) ようにする,というのが由来です。単純ながら,重要な化合物です。

図1. イギリス・ロジャーリー鉱山産の蛍石。可視光下では不純物により緑色だが(左),紫外線が当たると青白く発光する(右)。

どんな進路につながる?

元素の性質は新しい物質,特にガラスやセラミック,難燃性素材などの無機材料を開発するのに必要不可欠です。無機材料系のメーカーでは,この講義の知識が大きく役に立ちます。化学薬品を取り扱う技術職を目指す人にはぜひ受講してほしい科目の一つです。