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音響に関する技術開発を行う会社に勤めています。ヘッドホンやマイクを製造するメーカーからの依頼で、新たな技術を開発するといったことを行っています。近年は音を取り込むといった技術はもちろん、音を音で消すANC(Active Noise Control)といった技術や、2個の無指向性(全指向性)マイクを使って信号処理を行うことで指向性をつけるというビームホーミング技術などに高性能なマイクが必要とされており、高度な技術が求められます。また最近はヘッドホンでも外部の騒音を消しつつ内側の音を生かすという「ノイズキャンセルヘッドホン」という商品が一般的になっていますが、このノイズキャンセリング技術をイヤホンにも搭載するといった要望もあり、部品の素材選びから検討を重ねるといったこともあります。音響に関する技術開発はAVメーカーだけでなく自動車メーカーや医療分野など裾野が広いため、多くの知識が求められます。
日本のメーカーのアドバンテージといえば、やはり高性能、高品質という部分です。性能が高くなければ、低価格をアドバンテージとする他国の商品に勝つことはできません。業務でも日々お客様が求めるマイク性能を引き出すために部品設計や実験を行っていますが、ご要望というハードルをクリアすれば、その先にはさらに高いハードルが待っています。そしてそれをクリアするための開発実験がいつも上手くいくとは限りません。何度も繰り返し実験を行った末に、納得できる性能を開発することができ、お客様に喜んでいただけたときが一番嬉しい瞬間ですね。
業務では実験を行っていますが、その実験は失敗することもあります。ただ、実験において失敗は付き物で、それも加味しながら、失敗したときのリカバリーができるような実験計画を立てていくことがこの仕事には求められます。そして失敗したという結果からは、多くの経験を得ることができるし、次の実験ではその経験を生かしてスピードを速めて取り組むことも可能です。実験に対するこうした姿勢を学ばせてくれたのは、大学院時代の研究での経験でした。特に私が行っていた実験は時間のかかるものだったので、一回失敗してしまうと一週間近い日数を無駄にしてしまうことも少なくありませんでした。そこで身につけたリカバリーの方法や失敗経験から学ぶ姿勢が、今の業務でも役立っていると思います。
学生の主張を尊重してくれて、それをサポートしてくれる環境が整っていることだと思います。特に素晴らしいと思ったのは、学内に分析機関を設置している点です。走査型電子顕微鏡など高性能な器材も揃っている環境が実験の場の近くに存在していたことは、研究を進める上でも大いに役立ちました。また理工学研究科の施設が一つにまとまっており、他の専攻との垣根も低いことからいろいろな意見を多くの教員や学生と交わすことができました。私自身は自動車部にも在籍していたので機械工学専攻の学生に知り合いが多く、彼らと話したことが大きな刺激になったと思っています。現在の仕事でも日々新しいものに触れると同時に、新たな技術開発を行っていますが、今までにない「ものづくり」の楽しさを知ったのは、理工学研究科という環境で学んでいたからだと思います。
学部生時代から多くの建築設計事務所でアルバイトを行ったのですが、そこで出会った建築家の方から「大学院まで進んで専門的に学ぶといい」と薦められたことが、大学院へ進学した大きな理由です。現在は建築設計事務所に勤務し、個人住宅から都市計画まで幅広く手がけています。また業務内容も敷地の法的調査に始まり、企画・提案(プレゼンテーション)、基本設計、実施設計、工事監理、受け渡し、アフターフォローと多岐にわたります。現在の会社はオフィスを他の建築設計事務所とシェアしており、時には一緒に仕事をすることもあります。業務分野も幅広く、同時にさまざまな形態で仕事に取り組める点が気に入っています。建築設計ではいろいろと条件があるにせよ、基本的にはゼロから発想して作り出していきます。そうした「産みの苦しみ」を日々感じていますが、それも自分自身の成長の過程だと考えています。
やはり、自分が頭の中で想い描いたイメージが、実際に構造物として完成するということが、建築設計の面白みです。もちろんその過程はさまざまなことが起こります。簡単なイメージからスタートして多くの人と検討を重ね、多くのトラブルにも直面し、それでも前に進んでいく。金額も大きいので常に緊張を伴いますが、現場で建ち上がっていく様子をみると嬉しいですし、何より施主様と一緒に喜べる瞬間は、この仕事のなによりのやりがいだと思います。どの仕事も建物が完成したときには、達成感と次への課題が頭の中で渦巻きますが、喜んでいただいたというやりがいが、次の仕事への大きな原動力になっていると思います。
修士研究では団地の減築をテーマに取り組みました。少子高齢化の現在、郊外の団地をどう生かしていくかは非常に大きな問題で、その解決策のひとつとも言われる減築について掘り下げていきました。ただ、実際に研究が進むにつれて課題の大きさを知ると共に、思い通りにならないことも多々あることが分かってきました。建築というハードだけでなく、同時にソフトの面も考えていかなければいけないと実感したのです。修士研究ではそうした「建築にできることとできないこと」を整理してプレゼンテーションを行いましたが、それは実務の仕事でも変わりません。そして「できないこと」をそのままにせず、解決の道筋やベストな選択を考えられるようになったのも、在学中の研究の成果なのではないでしょうか。
私の修士生時代は新校舎の1年目ということもあり、設備が非常に整っている印象があります。ただ、それだけでなく、多くの先生と交流を持ち、幅広いお話を伺うことができたことも、理工学研究科の良さであると思います。単にお話を伺うだけでなく、自分の意見を言う機会や場所も、たくさん用意されていました。また研究科の先生だけでなく、さらにその先の人脈である学外の建築家の方とも先生を通じて知り合うことができました。そうしたつながりから、多くの建築設計事務所でアルバイトやインターンを経験。現在の勤務先も、学生時代にインターンで訪れた会社です。そうした意味で、建築・建設工学専攻は研究だけでなく、将来についても深く考えることのできる場所なのだと思います。
入社してしばらくはハザードマップの作成や津波の避難シミュレーションといった防災関連の業務を行い、現在は国土交通省関連の都市計画に関する業務をメインに行っています。具体的には、自治体の詳細な将来人口分析業務や公共交通の利便性分析業務を担当。人口減少と高齢化を背景に地方都市を中心に、都市機能の喪失や財政状況の悪化が懸念され、財政面及び経済面において持続可能な都市経営が求められています。そのための課題分析及び解決すべき課題の抽出を自治体向けに行っています。人口推計のデータ計測にはさまざまな手法があるのですが、最適と思われる手法をお客様に提案し、了承を得た上で進めていきます。
この仕事だから、というわけではありませんが、入社6年目を迎えて業務を任せられることが増えてきました。当初は一人で業務を担当するとなると右も左も分からず、ついつい上司に頼ってしまいがちだったのですが、次第に業務のことを考えて仕事を進められるようになり、成果を上げられるようになってきました。そう考えると、仕事の進め方で悩んでいた時期も無駄ではなかったのだと思います。先日も交通利便性分析に関する業務を任されたのですが、なかなかお客様に提案を受け入れてもらえず苦労したことがあったのですが、そうした経験を重ねることで、自分自身にも一つずつ引き出しが増えていくのだと感じています。
大学院時代の経験は、すべて現在の仕事の基礎になっていると思います。研究においては、ある程度自分で考えた上で進めていくわけですが、それによってロジカルな思考力が身についたと思っています。また研究を進めていくためには教授や学生と、学部生時代とは異なる専門的な議論を交わしていくことになります。こうした研究を進めていく上のやり取りは、仕事でも欠かせないコミュニケーション力を養うのに大いに役立ちました。この他にも学生時代にArcGISと呼ばれる地図情報システムを使っていたのですが、その経験者が現在の会社には少なく、私が一手に引き受けている状況です。上司からもそのスキルをもっと磨いてほしいと言われており、社内におけるエキスパートとして業務範囲を拡大させていきたいと考えています。
他の専攻については分からない部分もありますが、環境システム学専攻に関して言うならば、幅広いジャンルの先生方が揃っていたことが挙げられます。たとえば大気環境系や都市計画系、廃棄物や微生物等々。その中で、基礎的な部分から専門的な部分まで広く深く学べるのが良いところであると考えています。私自身は気象・熱環境に関する研究室に所属したのですが、修士生時代に都市計画についても学んだことが、今の仕事を進める上で役に立っています。環境システムを志望する学生は、修了後に私が勤務しているような企業を志望することが多いと思います。実際に社会に出てみると、環境システムについて幅広く学んだことが、大いに役立っていると実感します。
ホンダが製造する車に搭載されるエンジンの研究開発に携わり、主にエンジン単体での性能評価を行っています。昨今燃費や排気ガスの規制が厳しくなっておりますが、ホンダも例外でなく、より低エミッションのエンジンを作ることが私たちの重要な課題となっています。その課題を解決するため、日々研究に明け暮れています。
私の場合、エンジン単体での評価が主な業務なので、その中で自分の個性を出したり、もっと性能を向上させるためにどうすればよいかを考えて日々業務を行っています。同じ目的を持って共に働くチームスタッフと議論を深め、その内容をハードに反映できたとき、やりがいを感じます。
たとえば、あるテストを行った際に生じた結果が事前の予測と違ってしまったとき、その理由としてどんなことが考えられるかを探究するのに、大学で使っていた教科書を開くことが多々あります。大学時代に学んだ基本に立ち返ることで、生じた結果に対する答えを先入観なく柔軟な思考で導き出せることがあります。
私は大学時代は、理系、特に機械工学の分野を見てきましたが、その分野に関して言わせてもらえば、研究に対してガッツがあり、将来どんな仕事をしたいか明確な学生には非常に動きやすく、勉強しやすい環境だと思います。ただし、昨今“目的のない勉学”が盛んな現状ですので、あえて厳しいことを言わせてもらえば、最低限大学に入る前に、おおよそでいいので、どの職業で活躍したいかは決めておくべきでしょう。
電車の線路や空港、高速道路など、交通施設に関する電気技術分野の設計や施工監理、コンサルティングを行う会社で、主に鉄道の電車線の取り替え工事の設計を担当しています。現在担当しているのは東海道新幹線です。これまでも新幹線は新型車輌を導入するなど常に時代に応じたアップデートを繰り返してきました。その反面、電力会社から受電した電力を車輌に送るための電線や電車線支持物に関しては、50年以上前の技術をベースとして古くなった部品の交換にとどまっていたのです。そこで東海道新幹線の電車線設備の老朽化に伴い、抜本的な取り替え工事を行います。私が担当するのはその設計で、まず現場調査を行い、電車線支持物の強度検討・電線に関する各種検討を行い、施工工程を踏まえた平面・断面略図の作成を行います。そして、図面が決まった段階で積算・見積もり図面の作成を行い、成果物として提出する流れとなっています。今回は東京・新大阪間と長距離になるため、時間をかけて少しずつ振り替えていく予定です。
電車線設備の工事というものは、その多くが実際に線路を使用しながら作業を進めていくことが少なくありません。そこでまず工事を開始する前に、長期的な視野に立って設計を行います。以前にも電車線工事の施工監理でケーブルに関する工事を担当していたとき、ケーブル配線経路や使用する金具などを施工業者と打ち合わせながら、作図・検討を行いました。ただ、実際に工事が始まると当初の想定とは異なることも発生し、提案した設計通りにはいかないこともあります。そこで、そうした工事段階で微修正を加えつつ、再度設計を行うことも。ときにはその修正の幅が大きく、何度も修正を重ねることもありました。このように苦労の多い仕事ですが、実際に自分の携わった仕事が目に見える形で残るので、非常にやりがいがありますね。特に新幹線は日本における最先端の鉄道技術が投入されています。そこに関わることができるのは誇りであり、やりがいの一つ。ただ、在来線や地下鉄の電車線設備にはまた違った面白みもあると思うので、そちらにも興味はありますね。
学部生時代は、学内に設置されている充放電可能なNAS電池と呼ばれる大型の蓄電池に関する研究を行っていました。その電池の運用解析を行うという研究で、その研究を続けたくて、大学院へ進学したのです。その研究と現在の業務は内容が少し異なるのですが、CADを使用した設計が好きだということもあり、現在の会社を選びました。研究ではプログラムを書いて解析を行っていたので、データを読み解く力というものは身についたし、役立っていると感じます。ただ、実際に社会に出てみるとそうした技術的な部分だけでなく、コミュニケーション能力も役立っていますね。大学院では学会での発表に向けて論文の作成や、口頭発表の準備を行いました。また企業合同研究での打ち合わせなども頻繁にありました。それらはまさに、現在施工業者や鉄道会社の方々と仕事を進めていく際に欠かせないスキルです。特に、設計だけではなくコンサルティングも行うので、お客様に納得していただける資料作成や説明する能力も求められます。そうした際に、大学院で培った経験が生かされていると思います。
設備の充実度は非常に高いと思います。研究室自体が広く、大学院生一人ひとりにパソコンを使わせてもらえました。当時は大がかりなプログラムを書いていたのですが、そのパソコンのスペックが高かったおかげで、処理速度も速くて研究に没頭することができました。他の専攻の大学院生からもそういった話を聞いていたので、研究科全体で設備は整っていたのだと思います。また当時は専攻を越えての学際的な取り組みはあまりなかったのですが、現在は学部でも学系を横断するような研究も多いと聞きます。今後は大学院でもそうしたコラボレーションから、今までにないような研究が生まれてくるのではないでしょうか。先生方も幅広い専門分野を研究されている方が多いし、学部の設備以外でも図書館など大学全体の施設が整っているのが明星大学の良さでもあります。学ぼうと思えばどこまでも学べる環境なので、積極的に研究を掘り下げていってほしいですね。
眼科医療機器の輸入販売を行う会社で、薬事業務を担当しています。日本には医薬品医療機器等法という品質、有効性および安全性の確保などに関する法律があり、この法律に則って厚生労働省にさまざまな許認可を得ないと国内で販売することができません。私が社内で担当しているのは、主にそういった許可を得るための申請業務です。審査に必要となる申請書類を作成し、提出した書類について審査者から照会があれば回答したり、追加資料を求められれば必要なデータを集めて提出するといった折衝が含まれます。また販売にあたっては出荷までの社内体制や、市場に出回った後のフォロー体制も要件に含まれているため、関連部門と共に社内体制を整えたりするような業務もおこないます。医療機器の中には化学的な知識が役立つ製品もあるので、そういうところで学んだ知識を生かせればと思っています。
弊社は輸入会社であり、「ものづくり」に携わっているわけではありません。海外から医療機器を輸入して日本の市場で販売するわけですが、そのためには国内で定められた要件に適合している必要があります。そうした規格が日本と海外では異なることが多く、事前に用意しておくべきデータがなかなか送られてこないなど、輸入会社ならではの苦労も少なくありません。ただ、そうやって苦労して国内で広めた医療機器に関して、使用してくださった先生方が好意的な意見を寄せてくださるのを目にすることがあります。私自身は実際に治療を受ける患者さんはもちろん、そうした先生方と直接お話をする機会はないのですが、そうしたご意見を目にする度にお役に立つ製品を市場に出せているのだと感じます。日本は非常に品質の高い製品を作る点が特徴ですが、海外は独創的な製品が多く、新しいものを生み出しやすい土壌があるように思います。それらを日本に導入すれば国内メーカーも開発を進めるでしょうし、私たちの仕事が日本の医療をより良い方向へと向かわせる一助となればと思っています。
現在の業務内容では、大学院で学んだ化学知識が直接役に立つ場面というものはそれほど多くはありません。ただ、社会人になって難しい課題に直面しても前向きに取り組むことができているのは、大学院時代の経験があるからだと感じています。当時、探究する楽しさと、少しずつではあっても達成していくことの充実感を感じながら毎日を過ごしたことにより、現在もさまざまな案件に対して粘り強くトライすることができていると思います。また、学生として研究できる時間には限りがあります。私自身は学部生の4年次に松本先生のゼミに入り、先輩たちが手掛けてこなかった新しい研究を担当しました。その研究を続けたい一心で大学院への進学も決意したのですが、卒業までに結果を出したいと焦りながらも、着実に根拠となる実験データを積み重ねる毎日でした。そうした中でも、なぜうまくいかないのかという疑問を持ったり改善点を考えたりすることが大事だったように思います。仕事の質や進め方の効率化に対しても、このスタンスを生かし続けたいと考えています。
研究環境には、設備的な面、生活面というようなさまざまな要素があると思います。在学中、研究で得られた結果を分析するにあたり、大学院生は基本的に大学が保有する分析機器を使用することができました。社会に出ると分析は他の部門が行うことが多いのですが、測定用の試料を作るところから測定、解析までを、学生が一通り行うことのできる環境でした。実験結果には測定をかける試料の精度だけでなく、測定の精度や機器の状態も影響するので、思わぬ結果が出た場合は、試料そのものだけでなくさまざまな方面から考察することになります。また理工系の大学院生は、毎日のように朝から夜遅くまで研究室に籠もることになります。そういう意味からも生活環境は非常に重要だったと思いますね。明星大学の特長なのか、研究室に在籍する学部生から博士課程の先輩までが、縦にも横にも交流がありました。そうしたつながりは他の研究室まで広がることもあります。嬉しいことに、卒業して10年程経つ現在でも、他の研究室の人とも交流があります。このことは理工学研究科の環境の良さを表しているのではないでしょうか。